会社員としてプログラマーをしていた頃、私は完全に自信を失っていました。
「何でもいいから、自分に確かな自信をつけたい」。そんな切実な思いと、事務職へ転職する際のアピール材料になればという打算的な期待を抱えて、簿記3級の勉強を始めたのです。
試験日が近づくにつれ、休日は一日中机に向かっていました。しかし、努力とは裏腹に点数は一向に伸びず、心はどんどん重くなっていく。ある日行き詰まった気持ちのまま、重たい足取りで街を歩いていると、ふと視界にディズニーストアの看板が。
「少しだけ、可愛いものを見て気分転換しよう」
そんな軽い気持ちで足を踏み入れた店内。色とりどりの商品が並ぶ中で、私の目に飛び込んできたのは、少し落ち着いたピンク色が目を引く、愛らしいロッツォの姿でした。
「普段、人形になんて全く興味がないのに、どうしてこんなに惹かれるんだろう」
一瞬にして心がパッと明るくなったあの感覚は、今でも覚えています。
私が最初に惹かれたのは、その「色」でした。
実は以前から、同じキャラクターであるチェシャ猫の色合いが大好きで、ロッツォのピンク色はまさに私の理想そのもの。
手に取ってみると、まるで本物の赤ちゃんを抱っこしているかのような絶妙なサイズ感。手足が糸で固定されておらず、自由に動かせる作りにも心が惹かれました。これまで、小さいころからお人形を持ったことがなかった私にとって、この「抱っこできる」という存在感は、とても新鮮で温かいものに感じられたのです。
自分でも驚くような、直感的な一目惚れでした。でも、この時の私は、「この子と何か縁があるのかもしれない」と素直に受け入れることができました。
その時、ふと心に決めたことがあります。
「簿記の試験に合格したら、ご褒美としてこの子を私の元へ迎えよう」
合格という目標を、ロッツォという「楽しみ」と結びつけた瞬間、もう一度だけ勉強を頑張ろうと思えるようになったのです。 結果は、無事に合格!その足でまっすぐストアへ向かい、晴れてこのロッツォをお迎えしました。
疲れて帰ってきたとき、ロッツォを抱きしめるだけでフッと肩の力が抜け、素の自分に戻れるような気がします。
たかが人形かもしれません。
でも私にとってロッツォは、なくてはならない唯一無二のパートナーです。
仕事でどんなに自信を失っても、帰宅してこの子を触ると、『また明日も頑張ろう』と、自分自身を肯定してあげられるような気がするからです。
「なんとなく」で選ぶのではなく、「好きだという感覚」を大切にすること。 モノを選ぶことは、自分自身の解像度を上げることと似ています。
完璧なベージュのインテリアとは少し違うかもしれないけれど、私の心地よさを守ってくれるこの子は、これからも大切にしていきたい暮らしのパートナーです。